お知らせ

昨年10月にひかり宇宙新聞に掲載された伝説の宇宙飛行士・銀河剛さんのスペシャルインタビューを全文公開します。

暇な時間に読んでください。

* * * * * * * * *

 

国際宇宙ステーション(ISS)でのミッションが始まった若田光一さんに注目が集まる中、もう一人の日本人宇宙飛行士が活躍している。現役の宇宙飛行士でありながら「伝説(レジェンド)」と呼ばれる銀河 剛さんだ。NASAのミッションを遂行中の銀河さんが10月19日、ひかり宇宙新聞記者のインタビューに答えてくださった。

─ 今回はご多忙な中、我々のインタビューのために地球に帰還してくださってありがとうございます。

銀河 いえいえ、ちょうど地球の近くを通る予定だったので。家に帰ってテレビの録画設定をしようとも思っていましたから、ぴったりのタイミングでした。

 

─ えっ、誰かに頼まないのですか?

銀河 VHSテープのビデオレコーダーを使っているので、みんな使い方がわからないって言うんですよ(笑)。なので私が時々かえって、録画予約します。仕事ではハイテクしていますが、プライベートは結構ローテクに囲まれた生活をしているんです。さんまも ちゃんと七輪で焼く派です。

 

─ それは意外な一面ですね。では、さっそくインタビューを始めさせていただきます。銀河さんは宇宙飛行士になる前は何のお仕事をされていたのですか?

銀河 もともとは医学の分野で「病理研究」をしていました。簡単に言うと、細胞などを観察・分析して、なぜ病気にかかるのか、どのように病気が進行するのかなどを研究していたんです。

 

─ どうして宇宙飛行士になろうと思われたのですか?

銀河 無重力状態での細胞の研究をしたかったということもありますし、宇宙では人間の体にどのような変化が起こるのかというのも私自身が宇宙に行って確かめてみたかったということもあります。

 

─ では、宇宙飛行士になられてからのお仕事も、宇宙空間での病理研究など医学の分野だったのですね。

銀河 ええ、私はそのスペシャリストとして宇宙へ行っていましたから。私の研究が、いくつかの新薬開発に応用されていますよ。痔の薬の「ナオルンG」ってあるでしょう。あれも私の研究をもとに開発された薬です。いまはNASAから単独ミッションを任されていて、太陽系全体の調査を行っています。

─ 「単独」ということは、おひとりで活動されているのですか?

銀河 はい。ただし、これは異例中の異例です。単独ミッションというのは通常はあり得ません。100回を超える宇宙(フラ)飛行(イト)で実力が認められ、単独ミッションが許されました。また、私は医学や地質学、機械工学などの博士号を持っていますので、ひとりでもミッションを遂行できます。

 

─ おひとりで活動されていて危険に遭遇したことはありませんか?

銀河 宇宙ではハプニングはよくありますが、それを想定したたくさんの訓練をしていますので危険は回避できます。

 

─ なるほど。備えあれば患いなしですね。

銀河 はい。何事にもリスクを想定したシミュレーションは大切です。宇宙でのハプニングは命の危機に直結しますからなおさらです。そして常に冷静沈着に対応すること。私は宇宙飛行士になるために禅の修行も積みました。

─ いまや「レジェンド」と呼ばれてらっしゃる銀河さんですが、その銀河さんをいまに導いた先輩宇宙飛行士の言葉で印象的なものは何かあるでしょうか?

銀河 月並みですが「仲間を大切に」は何度も何度も言われました。宇宙ではたいてい5,6人の仲間と一緒に活動します。仲間との信頼関係がなければミッションはうまくいきません。宇宙飛行士を地球からサポートしてくれているたくさんの人たちも仲間です。いまは単独でミッションに取り組んでいますが、私はいつも仲間とともにいると思っています。先輩からは「ミッションは楽しんで」ともよく言われました。宇宙でのミッションはうまくいくことばかりではありません。うまくいかない時こそポジティブに考えるようにしなければ、たくさんの実験や作業をこなすことはできないのです。私も、後輩たちにはその二つの言葉を伝えています。

 

─ モットーとされている言葉を教えてください。

銀河 「全力投球」です。

─ 銀河さんらしいですね(笑)

銀河 周囲からはもう少し抑えた方がいいんじゃないかと心配されますけれどね(笑)

 

─ 逆に嫌いな言葉というのはありますか?

銀河 う~ん、特にありませんね。マイナスな言葉もプラスに捉えるようにしています。たとえば、「諦め」や「負け」にも何か意味があるのだと考えるのです。あっ、もちろん人を傷つける言葉は嫌いですよ。

 

─ ここで、この新聞の読者である子どもたちに、銀河さんからお言葉をいただきたいのですが。

銀河 子どもたちへのメッセージというわけですね。そうですね…、遠くにある夢も努力すれば近づくことはできます。たとえ夢までたどり着けなくても、いろいろなものが見えるようになります。だから、夢へ向かうことは大切です。宇宙飛行士って、みんながなれるものではありません。なりたくてもなれなかった人の方が圧倒的に多いです。でも、宇宙飛行士にはなれなかったけれど頑張った人たちは、みんなそれぞれの仕事で活躍しています。NASAの職員になった人もいますし、ロケット開発に携わっている人もいますし、大学の先生になった人もいますよ。あっ、痔の薬の「ナオルンG」を開発したのは、私と一緒に宇宙飛行士選考試験を受けた方で、いまもずっと友人です。時々薬の実験台になってと頼まれます。

もう一つ、皆さんにお願いがあります。私は宇宙を調査していろいろな星を見てきましたが、地球ほど美しく生命に満ちた星は他に見つけられていません。地球は奇跡の星なのです。皆さんには、地球を大切にするおこないをしてほしいと思います。

─ 最後に銀河さんの現在の目標を教えてください。

銀河 はい。まず、一つ目は「惑星のかけら」を全て見つけること。私は岩石にもすごく興味があって大学院では医学の傍ら地質学も研究していたんです。それがいま、惑星や小惑星の地質調査に役立っています。「惑星のかけら」集めは私が宇宙飛行士であった証にしようと特別な気持ちで挑んでいます。もう一つの目標は、ちょっと具体的ではありませんが、まだわかっていない宇宙の謎をどんどん解明していくことです。

 

─ なるほど、銀河さんの目標は宇宙と同じように果てしなく続いていきますね。銀河さんのこれからのご活躍を応援しています。今日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

銀河 こちらこそ、ありがとうございました。

インタビューを終え屋上園庭をあとにする銀河さん。愛機フェニックス号は音もなく離陸し、青空へ吸い込まれるように見えなくなった。

 

スポーツ界やショービジネス界など、様々な世界に「レジェンド」が存在するが、宇宙の分野では やはりこの人をおいて他にいないだろう。宇宙飛行士 銀河 剛 ─彼の言葉、そして彼の生き方は、多くの子どもたちを導く輝く星のようである。

GONZO(記者)

銀河 剛 (ぎんが ごう)

1970年7月7日生まれ。医学の道から宇宙を目指し、1995年にJAXAの宇宙飛行士に。ICHIROがメジャーに渡ったのと時を同じくしてNASAへ移籍し、100回を超える宇宙飛行で数々のミッションにたずさわる。

* * * * * * * * *

 

子どもたちに楽しい遊びを提供するのであれば、まず自分たちが楽しんでいなければそれはできません。とことん面白さやリアルさを追求する蔵持こども園の自慢の保育者たちです。

TOP